そのころ、親分たちはぶん殴りっこをしていた。争いを外にふたりは金庫をこじ開けた。フランソワは中を覗く。――「現金ばかりだな・・・お?」金塊だ。フランソワはそれを手に取る。さらに書類、取引の記録のようだ。――「これは売れる?」フランソワは聞いた。この国ではナンセンスかもしれない。――「腐敗だわ。」そう、それは腐敗なのだ。顧客のリスト、商売仲間のそれ、それはスキャンダルの記録でもある。エリザベスは一応、それも手に入れた。――そしてクライマックスは大袈裟に銃撃戦!親分たちは実に互いに撃ちあって、皆死んだ。――「行こう。」エリザベスは言った。――ブリティッシュ・クレイジー?エリザベスは何でもするのか?
しかし標準的な人間はこうなのかもしれない。いや寧ろ自然の自然に致すことではないか?――「これだけあれば結構なおカネになる。」エリザベスは言う。――「その剣があるんだからシルフとは知り合いなんでしょう?」――「いや、会ったことはない。」フランソワは言う。――「スノーフェイスがくれたんだよ。さて、この子たちをどうしよう?」子どもたちの屍体の前、フランソワは言った。フランソワは哀歌を唄っていたのか?――「お墓を作ってあげるわ。その前におカネよ。」この大富豪の娘は陽気だった。――殺戮と破壊、それは統治の同語?まさに処女王の道?そして彼らは二手に分かれ、一方は車を売りに、もう一方はそのほかを売りに出かけた。
この振る舞いは3日間続き、5人はさらなるショーをして結構なおカネを稼いだ。――「現金がいい?それとも金貨?」フランソワは聞いた。――「どっちでもいいんじゃないか?」アンセルモは言った。――「じゃあ小切手にしよう。」エリザベスは言った。――そして彼らはキンダーガルド銀行ニュードリー支店に口座を開き、シルフたちを探すことにした。――そのころ、シルフたちは何をしていたのか?シルフたちはある修行場にいた。そこではまやかし教の信者たちが大変に厳しい訓練に励んでいるのだった。明らかにまったくナンセンスだとシルフたちは考えていた・・・ので、彼らを誘惑する。――「気になることはないか?」スーは修行中の彼らに言う。
――「お前らは生殖に励まなくてよいのか?」エアリアは言った。しかし生殖の帰結は屡々人身売買のようだった。――「お前らの善がりは新しい未開を創る・・・お前らの不安がそうさせるのだ。」僧職の亡霊が憑いた科学が盛り、新しい預言書が書かれるだろう。スーはそして乳房を相手にすりつけた。修行僧は驚き、そして安堵を得た。――「文明人は上手に嘘をつけなければな?」エアリアは言う。――「そしてそれに疚しさを覚えるようなら、上出来の文明人だ。」修行僧たちは何事か感銘に浸っているようだった。――「嘘は仕方がない。最悪の破壊を除きたければ、わたしたちは少しずつ破壊をしなければならないからだ。」スーは言った。
――そしてふたりは何をしたかったのか?不条理をこの世に撒きたかったのか?ともあれふたりは寺院に火をつけ、そして風の力でそれを巨大に──そして辺りは火に包まれた。それは街へと燃え広がって無数の家屋を焼き、膨大な人命を呑み、そしていくつもの人身売買ブローカーを壊滅させた。――自然の力はこういうものらしい。自然は屡々物事をよく弁えていない。――「あいつらはきれいさっぱりだ。」スーは言った。――「これでこの世は長閑になる。」エアリアは言った。――あらゆるものに因果はあるのか?自然に因果はあるのか?自然はしかし嘘がお嫌いのようだった。自然は革命でも何でもする。そして自然は逆立ちした人間の敵らしい。
信仰は眼くらまし以上、何もしなかった。――そのころ、国境付近の大火事のニュースが報じられた。5人はカフェにいた。――「お、何か飛んでるぞ。」眼のいいアンセルモは言った。――「シルフってやっぱり女だろうな?」ペペは言った。――「孤独な遊びだと思うね、こういうのは。」ラウルは言った。薄型の大きなテレビのまわり、人間たちはわらわらと屯していたが、概して無感動だった。自然と人為が合一している「閉じた社会」の人間、あるいはまた近代国家の人間。――「さて、お弁当作ってお出かけしよ。」エリザベスは言った。映像を伝えるテレビ、その火は森の樹々に燃え移り、その山火事は拡大しているようだった。――大変なことになる・・・。
ふいに音声をエリザベスは耳にする。――「フランソワ、何か言った?」――「・・・何も言ってない。」エリザベスはさらに聞き耳を立てた。――「大変な唐変木、あの連中を観たか?」誰かの声。――「あの連中を驚かせるには何が必要だと思う?」もうひとり、誰かの声。――「戦争。」エリザベスは言った。――「・・・ふむ、お前は頭がいいな?」声。――「途上国は怨念の塊だからああなるのだ。未開の国とはああいうもの、あいつらには疚しさがない。魔術を生きるとはああいうことを言う。」あまりに多くが慣習で、あまりに多くが無感動、そして人々はカーストを生き、思考を働かせることがあまりなく、新しい意識もない・・・いや寧ろ、新しさは敵になる。
――「プロメテウス・・・お前は火をつけるのだろう?――なあ、エリザベス・・・。」そして声はやんだ。――ふと、あるアイデアが思い浮かんだ。――「・・・皆殺しだわ。」コルドン・サニテールが押しよせてくる。それは「自然国境」を定めるはずだ。――「で、どうする?」フランソワは聞いた。――「アンセルモ!」エリザベスは呼ぶ。するともぐもぐとキュウリのサンドウィッチを食べながらアンセルモがやってきた。――「何だい?」アンセルモは珈琲をすする。――「国境線を守るのよ。」――「・・・俺たちだけで?」アンセルモは葉巻を取りだしその端を切る。――「サイクロンだわ、お願いをするのよ。」――「俺が?」アンセルモは葉巻に火をつける。
何の直観かはよく分からなかったが、アンセルモが適任だと心得たので、エリザベスはそのようにした。――自然主義者はお人好し?腕白を装い、独り善がりをしたいだけ?そしてエリザベスはリュックから地図と「宇宙ダイス」を取りだした。この恐ろしい魔法アイテムは天変地異を引き起こす。――「大体この辺りよ。」エリザベスは指さす。――「とんでもない嵐と大雨だろうね・・・まあ、いいか。」フランソワは言う。アンセルモは何度かうなずく。――「何が起きても、俺は責任を持たないよ?」そしてアンセルモは2つのダイスを悠然と掌の中で転がしながら瞑想する・・・あらゆるものの破壊・・・あらゆるものの略奪・・・あらゆる聖職者の夢・・・。
ほとんど最強の悪魔と契約したスノーフェイスの魔力は絶大だった。――「よし。」2つを握ってアンセルモは言う──そして念じてポイ・・・ふむ。――「・・・素晴らしいわ。」エリザベスは夢見るようだった。それは魔法のように火と土のサイン。――「うん・・・、」と、フランソワは両方を指で突いた。火と土は転がり水と風に・・・。――「・・・で、何が起こるんだ?」ペペは言った。――「結局、俺たちがあいつらを救助しなきゃならないって、そういうことじゃないのかな?」ラウルは言った。――そういうことらしい、預言はあまりうまくいかないらしい。――「そうね!そういうこと!」陽気な破壊者、エリザベスは言った。――そして彼らは被災地へ向かう・・・。
そのころ、ドカン高原に亀裂が走り大量の溶岩が噴きだした。どろどろの溶岩は付近の村や街を丸呑みにする。ほぼ同じくして洋上、巨大なサイクロンが発生した。山火事は娼婦たちの街に迫り、浄化の火は人間たちを焼く。――この浄化という恐ろしい原始的精神は数千年の間、人間たちを規定してきた。それは人間たちの器であり、人間たちという料理を載せてきた。こうした精神は屡々料理を台なしにした。精神は一般に単なる器であり、それとして意味不明だ。――「すごいわ。」大変な端なさでエリザベスは被災地を眺めていた。――「・・・もう、どうでもいいだろう。」フランソワはあきらめ加減、混乱した人々の逃げ惑うさまを見た。
――「閉じた社会」のリビドー、そして破滅は突然訪れる。シルフたちは猛火の上を舞う。――「これで清々する、わたしたちはとても穏やかになれる。」スーは言った。――「あの下らない愚かな生きものは皆死ぬ──これは宿命というものだ。」エアリアは言った。――こうして自然は高雅な欺瞞を働いていたが、その大願は成就する。自然はユーフォリアに目覚めていた。貧しい娼婦たちの街は焼きつくされ、ビジネスはカーストもろとも不可能となり、生き残った人々の暮らしもほぼ同様となり、彼らのうちのほとんどは一からやりなおさなければならない。呆然として5人はこのさまを眺め、時折ニヒルな笑いを浮かべる。――「・・・ん?」
双眼鏡で観ていたアンセルモはまた何かを見つけた。それは火事場泥棒であり、ありきたりなさまだった。――「やられているな?」同様、ペペは眺めて言った。――「俺たちのチョウザメはちょうどよく消えていくよ。」良心に目覚めたのか、ラウルは言った。――「ふん、情けというのは譫言であるにすぎん・・・俺たちは奪わなければならない。俺たちには目的があるのだ。」体よく聖職者のアンセルモは言った。――そのころ、猛烈なサイクロンがブラフマンに上陸、マカラ河の河口、そのデルタ地帯を蹂躙しはじめた。――明らかな異常気象・・・それはひ弱な建物をなぎ倒し、猛烈な雨で河を氾濫させ、建物の残骸を押し流し、そして人間たちの生命を奪う・・・。
――人殺し・・・雨は降る。焼け落ちた家屋、同様のヒト、残された金品と、それを奪うヒト、自然、災害、運命・・・神の悪戯?衣装ダンスの不思議を見たその女の子はまだその屋敷にいた。大雨は山火事をいなしたが、人間の生命もさらに消した。――自然は素晴らしいか?人間の魔法とはいかに?――「何してるの?」エリザベスは言った。一行はあの子どもたちを弔いに来たらしい。女の子は振り向いたが、黙っていた。――「コーラ飲む?」フランソワはコーラをさし出す。女の子はそれを受けとる。――「名前はなんていうの?」エリザベスは聞いた。――「・・・シェリー。」女の子はペットボトルの蓋を開け、美味しそうにそれを飲む。――人殺し・・・雨は止む。
――「善行だな?」ラウルは言った。――「約束どおりだ。エリザベスは恐ろしいからな。」ペペは言った。屍体は6つ、そしてラウルたちは穴を掘り、木を組み、それは小ぎれいな十字架の墓となる。アンセルモは教典を取りだした。これは一応、正式な葬儀だった。――「ほかにもお友だちはいたのよ。」女の子は口を利いた。――「さらわれたの?」――「逃げたのよ。」見やれば向こう、フランソワが森から帰ってきた。小奇麗な蓮の花をフランソワは持っていた。アンセルモはカーテンを裂いて法衣らしいものを作り、盗んだそれらしい宝飾を身につけた。教典を持ち、何やら神々しい面持ち・・・。――「さて、やるか。」悪党もたまに善をなす?――聖職者・・・。
棺はなかった。異教の道理はシェリーにはよく分からなかった。フランソワは子どもたちの胸に蓮の花を捧げ、小奇麗な十字架は立てられた。十字架は6つ。――「ごほん、汝ら・・・しもべたち。」アンセルモは詠う。――「現世はまさに血まみれの夜――暗きもの去り、暗きもの来たる。去来哉、生命かは分からぬもの、傍若無人、礎石を砕き、身を亡ぼすもの・・・汝らは禍なり、人の自然なり。されば人とし、人となりて言う――汝らはしもべなり。明るきを知り、暗きを謗り、営々、人の高雅を称えよ。汝らは信じたり、汝らは勇みたり、汝らは愛したり。汝らの墓、往く者は観ん・・・永久に、結ばれよ、永久に・・・。」聖職者は厳かに詠った。
こうして戦士の「道徳」、すなわち美徳は唱えられた。一行は黙祷を捧げ、そして子どもたちに土を盛る・・・と、空からシルフのふたりが降りてきた。――嫌味?――「気になる・・・面白い奴らだな?」スーは言った。――「お前は母親気どりか?」エアリアは言った。――人間ではない・・・しかしエリザベスも?――「気まぐれです。子どもたちはもう死にました。慰めにもなりません。」その自然はもっと殺した。――「気になる・・・。」と、魔がさしたのか、スーはかまいたちで自らの髪を切った。エアリアも同様の振る舞い。――「興味深い。しかし死者は決して報われない。自然には抗えない。人間は長持ちできない。人間は堕落して、平和を求めはじめる。」
ふたりは髪をさし出した。エリザベスはポシェットから小切手を取りだした。――「下らないことはやめろ。」スーはそれを遮った。――「それは面白いことに使おう――戦争があるのだろう?」エアリアは言った。――「じゃあ、これもらってください。」と言って、エリザベスはリュックからコーラを2本取りだした。――「とても美味しいんですよ。」エリザベスの愛らしいキラキラ光る眼がふたりには気になった。その眼は人為的にやや引きつっていた。――刃物?そしてサクソンの笑顔には気をつけよう!――「・・・もらっておく。」スーはそれを受けとる。――「天使は欺けないから気をつけろ。あいつらにはドグマしかない・・・気をつけろ。」エアリアは言った。
そして風が巻き起こり、ふたりは空へと帰っていった。――「・・・行こう。」あっけらかんとエリザベスは言った。――「わたしたちは旅に出る・・・武装よ、わたしたちは武装するの。」このクレイジーな大富豪の娘の眼はキラキラと輝いていた――皆殺しにするの、言わんばかりに。――そうするうちに未来を描いたかのような空飛ぶ船が空から降りてきた。引き返すような場所はなかった。――「ヘリコプターの乗り方教えてやるぞ。」まったく不可能だとペペは思っていた。――そうだ、一から十まで気まぐれだった。自然はいつも気まぐれなのだ。そして鳥刺しが降りて託けを告げた。――「次は華帝国だわ。」エリザベスは言った。――どうにでもなればいい・・・。
――そしてシェリーは船に乗る、秘かな野望を胸に秘め・・・。
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